特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会 理事長
リクルートにおける人材開発事業の研修等の開発責任者を長年つとめられた。
黒川さんと一緒に仕事をしたのは、実質わずか3か月と少しの期間に過ぎない。私が30年勤めた会社を退職し、この先をどうしていこうか考えていた矢先に出会い、濃密な時間を過ごさせてもらった。テーマは黒川さんの今につながる新規事業開発だったが、黒川さんとの会話の中心は「おじさんはいかに生きるべきか」だったと思っている。己の直面する現実そのものを他人と議論する戸惑いは、たちまち黒川さんの広くて深くて素敵にヤンチャな思考に魅了され、感応してどこかに消え去ってしまい、それからは飽くことなく議論を繰り返した。そんな機会をいただいたことは実に幸運であったと、今つくづく思う。
黒川さんとの話題を思いかえせば、これからの国と国を取り巻く環境、企業社会の変化が、そこに生活して働く人々に否応なく求めるものは、われわれ一人ひとりの成熟した知恵と対応力である、というようなことだった。そして、求められる「成熟化」と比較して感じるのは、私たち自身の成熟化がいかに遅れているかということだったように思う(わが身を省みればまことに痛感せざるを得ない)。
「成熟」という言葉には、「どんな状況にあっても社会の一員であることの責任を引き受けながら前を向いて生きていく力を備えること」というイメージがある。そこには「裏も表も含めて等身大の自分への絶対的自己肯定感」と「win-winを追求しながらlose-loseを引き受けあい、『あなたは大丈夫だよ』と言える能動的で厳しい他者信頼」があるように思う。そうした土台の上に立って、清濁混在して流転する世界に対して、現実的でしたたかな自分なりの打ち手を指せる人になろうとすること、それが「成熟化」なのではないか。われわれの一人ひとりが、とりわけオレたちフツーのオジサン、オバサンがどれだけ成熟して、これからの何十年かを生きていけるかが、日本にとって決定的に重要なのではないか。そうでなきゃツマンネーじゃねーか・・・。そんなことを、時には酔った頭で語り合っていた・・・よね?
黒川さんの新たな門出を祝すにあたって、あの3か月間の刺激的な場面が蘇り、あれは私の転機だったのだなと、やっと気が付いた次第です。黒川さん、ありがとう。
2013年9月1日
藤田 真也