慶応義塾大学法学部法律学科卒業。1986年(株)リクルート入社。
人事・広報などスタッフ部門の後、営業に異動。主に人材採用事業を担当。タウンワーク仙台版・金沢版創刊後、全国展開の責任者として札幌から鹿児島まで、地方のタウンワークを担当。(株)リクルートHRマーケティング 執行役員、(株)リクルートドクターズキャリア エクゼクティブマネジャーを経て、2012年4月からリクルートグループの特例子会社(株)リクルートオフィスサポート 執行役員。
2020年(株)リクルートを退職し(株)カラフィスを創業。2021年7月~NPO法人ダイバーシティ研究会理事長
1998年4月。先の見えない状況でリクルートも大ピンチを迎える中、「総合サービスグループ」として「人と組織に関わることだったら何でも営業する」をミッションに、一癖も二癖もあるメンバーが集められました。私はそのまとめ役、グループマネジャーでしたが、メンバーはそれぞれ自分の思った方向に進み、会社とは軋轢ばかり。ただ、一人一人の足腰は強く、熱い気持ちとクールな頭を持つ仲間で。そしてその中最も熱いのがクロでした。
総合サービスグループは1年だけの組織でしたが、その後20年以上、今も1年に一度ほぼ全メンバーが集まり、熱く議論を戦わせています。そんな組織、私の知る限りここだけです。
私は一昨年(2020年)、34年間勤務した(株)リクルートを退職し、㈱カラフィスを創業しました。カラフィスは、「仕事不足」に悩む地方の障がい者と、「障がい者の採用難」で苦戦する都市部の企業を「在宅勤務」でつなげることで新しい「働く」を創り出しています。リクルートで2012年から約8年障がい者雇用を担当し、80名を超える在宅障がい者を雇用してきた経験がベースとなっています。
日本では障害者雇用促進法のもと、43.5人以上の企業は従業員数の2.3%以上の障がい者を雇用しなくてはいけませんが、都市部では戦力となる障がい者の採用競争が激しく、達成できている企業は半数に届きません。最も競争の激しい東京では、達成できている企業は32.5%と2/3以上の企業が未達成となっている状況です。一方地方に目を向けると雇用義務を負う(従業員数43.5人以上)企業自体少なく、多くの意欲と能力のある障がい者が「会社がない」ことでその力を発揮できない状況にあります。
障がい者の「働く」には地域間で大きなギャップがあるのです。そして「在宅勤務」はそのギャップを軽々と乗り越えることができる有力なツールとなるのです。
障がい者の「働く」に関わるようになって強く感じるようになったのが「期待されること」の大切さです。障がい者が働くには「配慮」が必要です。ただ私にはその「配慮」が「遠慮」になり、「遠慮」が「私たちとは異なる人」「かわいそうな人」となっている気がしてならないのです。
毎年夏になると、「24時間テレビ」が放映されます。番組では多くの障がい者が取り上げられ視聴者は「こんなに大変なのに頑張っている」「応援したい」と胸を熱くします。それ自体否定するものではないのですが、どこかに「守らなくてはならない人」「自分とは異なる人」との気持ちがないでしょうか。TV上で感動する分にはいい。でもいざ自分の現実の生活の中に入ってくるのは…。自分とは違う世界に棲む人。
「自分と違う世界に棲む人」に対して「期待」は生まれません。期待がなければ、成長の機会が奪われます。私はまずは「在宅」というツールを使って、障がい者への「期待」を拡げていきたいと考えています。
以前、キャリアコンサルタントの勉強していた時、クランボルツの「計画された偶然の出来事」を学び、共感した記憶があります。私が障がい者の在宅雇用の会社を営んでいるのも、予期せぬ出来事をキャリアの機会として捉えてきたことに他なりません。1993年、バブル崩壊で営業所が閉鎖になったことから始まった、実家での1年間の在宅勤務。2002年、予算がないため既存の営業網を使うことができず、やむなく未経験者を雇用して始めた地方都市での新規事業。それらの経験が、今の「障がい者」×「在宅」×「地方」に結びついています。
期待を拡げ、偶然の出来事を拡げ、成長や変化につなげて行く。私は障がい者という世界からになりますが、クロと一緒に社会を少しでも前に進めていければと思います。
2022年1月1日
三井 正義