三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
政策研究事業本部 経済・社会政策部長 主任研究員
専門分野/労働経済、社会保障、マクロ経済、産業構造、計量分析、年金問題
先日、黒川さんと飲む機会を頂いた。独立するに当たっての寄稿を依頼されたのがきっかけだが、久しくお話ししていなかったことから、黒川さんがどんな思いで、どんなことを目指しているのか、やはり直接お聞きしなくてはと考えたからだ。
飲むほどに、食べるほどに饒舌になり思いを語られる黒川さん。それに引きかえ、私は、聞くほどに冷静になり、自分との対話が私の中で始まった。なぜだろう?黒川さんと一緒に熱い思いを共有できない自分が、腹立たしく、情けなかった。
改めて、『灯りを消せ!』(趣意書にかえて)を読み直した。私は、一企業のプレイングマネージャーだが、周りを見ると、環境変化にさらされ、自身の専門性が役立たなくなり、どうしていいか分からない状況に追い込まれている社員もいる。プレイヤーとしての自分もその一人だ。他方で、マネージャーとしての私は、そうした状況にある社員の気づきや新たな一歩に少しでも貢献したいと思っている。気づきのきっかけとして、私は、「好奇心」と「仲間作り」が鍵だと今現在は思っている。互いの専門性が微妙に異なる世界で、新たに自分を活かすには、自分とは異なる専門性を持つ誰か(社内でも社外でもいい)に好奇心を向け、その人をリスペクトし、また逆にその人からリスペクトされるように自分の好奇心を高めるしかないと思っている。問題なのは、まず、本人がそれに気づけるか、つまり好奇心の幅を少しでも広げることができるかどうかだ。気づいてもそれ以上に実行には時間がかかりそうだが、好奇心が仲間と一緒に踏み出す力になることを期待している。
それが、黒川さんの言う「非真面目な遊び心」に近いのだろう。確かに、人や物事に好奇心を持って接することは、とても楽しく遊び心を感じる。
私がこれまでずっと考え詰めてきたことの遙か先に黒川さんは先に着き、それを信念として行動に移そうとしている。彼の理論と実践への思いが、私の心を突き刺し、頭を冷静にさせていたのだろう。今はそう思っている。
改めて言うまでもないが、黒川さんは熱い心の持ち主である。その熱い心で、多くの人の「灯りを消す」瞬間に立ち会うことができるのかと一瞬疑ったが、少なくとも自分という一例が実証されており、今後のご活躍には太鼓判をすべきだろう。
2013年6月25日
横山 重宏