インテリジェンス中国(英創人材服務(上海)有限公司) 董事総経理、インテリジェンス香港 董事長
1986年株式会社リクルート入社。新卒・中途採用メディア営業、海外留学生在日外国人留学生採用メディア
企画担当を経験後、91年同社中国プロジェクトを新規事業として発起し、リーダーとして中国の事業を展開、
2002年Staff Management Consultancy Ltd.への経営参加と同時に、Anchor HRM Consulting Ltd.を香港に立ち上げ、同社C.E.O.に就任、2011年 経営統合によりIntelligence Hong Kong Ltd.の董事長に就任。
現地経営者として、また組織変革コンサルタント・マネジメント研修の講師も務める
2012年11月より英創人材(上海)の総経理兼務
黒川君の独立を熱烈支持します。おめでとうございます。
何をするのか良く聞いてない中で送られてきたのが「キャリア自律」のテーマ。
私は既に20年近く中国・香港のビジネスを海外でやってきましたので、その方面から一筆啓上いたします。
そもそも日本でこのテーマが取り上げられた背景と、海外では違っていることは周知のことだと思いますが、ここ中国・香港では転職は当たり前、組織への忠誠心醸成は非常に難しい環境です。現地トップとして10数年経ちましたが、「ボス、新しいポジションに着くことが出来ました!」と嬉しそうに退職の報告をされることにはさすがに未だ慣れません。ここではキャリアは自分で作っていくもの、探すものです。会社は用意してくれませんから。
中国では「発展空間」という言葉が良く聞かれます。会社が用意できるキャリアパスとでも訳しましょうか。発展空間のない会社には人は残りません。しかしながら、この発展空間を全ての人に用意するわけには当然行かず、また製造拠点ではあらかじめ器が決まった組織を作ってしまうケースが多く、企業の成長に合わせてポジションを用意するという市場開拓型組織以外では発展空間を作るのは容易ではありません。また象徴的な昇進事例があってもレアケースと見られてしまうことも多々あります。(私も入社7年でダイレクターまで引き上げた31歳の香港人というケースを創りました。それでも遅いと言われました)
発展空間=昇格と昇給なんですけどね。力のある人だけ。問題なのは仕事が出来るようになる前にそれを要求されること。権利ばっかり主張しないで業績で見せてみろと言いたくなりますが(言ってますが)、先に「発展空間」あるいはポジションを与えないと辞めていってしまう。
黒川君のコンセプトの中に「逆境にあっても前向きに・・・」というものがありましたが、リーダーとして育つ必須の経験が「修羅場」だと思います。一般的にはこちらでは「修羅場」からは逃げる。いくらでももっと楽な仕事・職場が他にあるからです。だから本当のリーダーは育ちにくいと考えています。それを乗り越える人達はよく独立していきます。自分でやった方が儲かりますから。
さらに香港は極端に言えば解雇が容易です。余剰人員整理という名目でよく解雇が行われています。個人側が会社に見切りをつけるだけではなく、会社がしっかりと不適切な人材をクビにする。この環境では、個人は自立せざるを得ません。会社に頼れない環境は、個人を強くしていくはずです。この緊張感は、日本にも必要です。
その他もろもろの事によって、中国・香港では自分・個人というものを中心にキャリアを考えて行く背景となっています。しかし自律か自立かと言えば、自立は必須ですが、自律しているかどうかは疑問です。まだまだ未成熟ですし、80年代に進出した日系企業では定年間近の長期勤続中高年が沢山いるのも事実です。能力アセスメントすると、他社ではその給与では採用されない人も多い。香港はすでに日本同様の問題が発生してますし、いずれ中国にも起こるでしょう。
ですので、キャリア自律というテーマは海外でも注目していきたいと思います。黒川君の研究とその実践の成果に期待しています!
2013年6月25日
黒崎 幸良